あ。キペラ座が見えるよ~アキペラ2016~

拝啓

都会に吹く風にもうっすらと秋の色が染まってきています。いかがお過ごしでしょうか。

先日、北千里で催されたアキペラ2016に行ってきました。

あなたが大好きなぷっちだるも出演していましたよ。

彼らの出番の冒頭、面白いことがありました。確かにアナウンスでは

「それではお聴きください。ぷっちだるで、『TOUGH BOY』!!と紹介されたはずなのです。

しかし、聴こえてきたのは全く別の曲。

そう。「ペガサス幻想」の前奏です。

はて、どうしたことかと思案顔をしておりますと、リードを歌うAが

「曲、ちが~う! ちが~う! ちが~う! ちが~う!・・・」

と叫んでいるではありませんか。私は大笑いをして思わず腹を抱えてしまいました。

これがフランスでいうとことのエスプリというものなのでしょうか。

今年の夏はオリンピックがありました。

それがあってか、彼らはやれ体操が凄かった、やれバトミントンでは逆転劇が見られたなどと語り続けました。

そのうち彼らの語り口にも熱が帯びはじめ、レスリングのことが話題に上りました。

伊調馨の国民栄誉賞。

吉田沙保里の屈辱の銀メダル。

テリーマンが子犬を助けるために試合に遅刻。

ラーメンマンを襲った不慮の事故。

本当にいろいろなことがありました。

4年後、オリンピックはわが祖国で開催されます。

4年後の超人たちに想いを馳せながら、ぷっちだるは「炎のキン肉マン」を歌い上げていました。

私も一人の日本人として、彼らの歌に胸が熱くなったものです。

彼らは語り続けました。

ところで、胸が熱くなると言えば、

40年間連載を続けていた「こちら葛飾区亀有公園前派出所」が閉幕を迎えました。

昨今、警察の汚職も取り沙汰される中、両さんのような人情にあふれた人物がいなくなるのは本当に寂しいことです。

日本もいよいよ物騒な街です。悪党がはびこらないことを切に願うところです。

悪党といっても中には義賊という輩もいるそうですね。

中でもルパン3世は英雄とも言える人物でしょう。

彼はとても魅力にあふれていて、冒険心の強い人間です。

奇妙な話ですが、僕は彼のようになりたいとも思うのです。

おそらく彼らもそうなのでしょう。「セクシー・アドベンチャー」という、とても魅力的な歌を披露していました。

今こそ、遊ぶ時なのです。

話は変わりますが、古くから秋にはいろいろな修辞がつけられてきました。

スポーツの秋、読書の秋、芸術の秋、食欲の秋などなど。

最近では「北斗の秋」、「紅蓮の秋」、「銀河鉄道の秋」、「聖闘士の秋」なんていう言葉も耳にしたりします。

その中でやはり忘れてはいけない秋がありましたよね。

そう。「ジョジョの奇妙な秋」です。

日本人と言えばまず何をおいても「ジョジョの奇妙な秋」でしょう。

空から零れ落ちる二つの星は光と闇の水面に吸い込まれていく。

目をつぶれば、そこに日本の原風景が浮かび上がってくるような気がします。

 

また二人で生贄を捧げに行きたいですね。

それでは今日はこのあたりで筆を置きます。

お返事をお待ちしています。お体に気を付けて。

それでは。

敬具

追伸

石仮面をかぶり過ぎは体に堪えるのでほどほどに。また一緒に波紋を練りましょう。

(出典:石ノ森承太郎「彼の人への手紙」)

私服でもコーディネートによって衣装っぽくなる~浴衣祭り・茶屋町ベンダース再び~

良い子のみんな、こ~んにちわ~!!

僕は、歌のお兄さんだよ!

また新しいキャラクターを入れてきたよ!!

今日は梅田・茶屋町で開催された浴衣祭りに来ているよ!

え、何でそんなところにいるのかって?

何と、以前に催された「チャリウッド」に引き続き、

「浴衣祭り」でも「茶屋町ベンダース」がまた出没するということで参加させてもらったんだよ!!

本当に懲りない面々だよね!

今回も僕らぷっちだるは「応援」という商品名で出演することになったので、歌のお兄

さんと一緒にみんなでお客さんを応援する歌を歌おうね!!

さてさて、最初の出番はどこだい?

直前までNu茶屋町の前あたりでやるって聞いてたけど、

何だか大人のみんなが相談をしているよ!

「今日、ちょっと暑すぎません?」

「熱中症とかで演者さんやお客さんが倒れても困るしな」

「どこか別の場所でできへんかな」

そんなやり取りがあったのかどうかは分からないけど、

結局茶屋町のLoftの1階にベンダーを設置することになったよ!

大人ってスゴイね!というか、MBSがスゴイね!!

とは言え、Loftの広いから隅っこの方でひっそりとやらせてもらうのかと思ったら、

1階エレベーター前にベンダーが設置されることになったんだよ!

 

特設で浴衣売り場でできているあそこだよ!

というか歌のお兄さん、前日にここに買い物に来たよ!

図らずも下見をしていたよ!

おっと、そうこうしているうちに元気な男の子が「応援」のボタンを押してくれたよ!

じゃあ、行ってみよ~!

良い子のみんな、こ~んにちわ~!!

僕は、歌のお兄さんだよ!

さっきもやったやつだよ!!

今日は、「応援」のボタンを押してくれたこの男の子のために

みんなで歌を歌ってあげよう!

良い子のみんな、集まれ~!!

うわぁ、良い子というかおっさん達が集まってきたよ!

そうだよ!

僕らがぷっちだるだよ!

よ~し、じゃあみんなで何を歌おうか?

「ロボットのやつが良い!」

「残酷なやつが良い!」

「エヴァが良い!」

了解!じゃあみんなで「エヴァ」を歌おうか!

元気な男の子も一緒に手をつないで踊ろう!

それでは、ミュージック・スタート!!

 

♪残酷な天使のテーゼ

 

よ~し、盛り上がってきたね!

次は歌いながらクルクル回ろう!!

お、元気な男の子、ノリが良いね!

最後はみんなでハイタッチで、イエ~イ!!

「結構面白かった」

元気な男の子、なかなか言うね!

おっと、次はシュッとしたお兄さん!

多分、アニメが大好きだね!

じゃあもう一度、良い子のみんな、集まれ~!

このお兄さんとは何を歌おうか?

「巨人、巨人!巨人のやつが良い!!」

巨人かい?けど僕らは「思い込んだら試練の道を」的な歌はレパートリーに入っていないよ?

あ、そっちの巨人のことだね!

よ~し、じゃあみんなで「巨人」の歌を歌おう!

今度はお兄さんは最後にポーズを決めてね!

右手でこぶしを突き上げて心臓に刺すんだよ!!

それでは、ミュージック・スタート!!

 

♪紅蓮の弓矢

 

イエ~イ!最後もぴったりと合ったね!

ありがとう~!!

あっという間の出番だったけど、みんな元気になったかな?

ベンダーの裏で待機しているときに一緒に出演した演者さんに

「パフォーマンス、半端ないですね!」ってリスペクトされたよ!

おっさん達が勝手に楽しんでるだけだよ!!

じゃあまた会おうね!

みんな、バイバ~イ!!

著作:N○K

そして、彼はステージを降りる~よりアイ2016・その3~

その瞬間、一体何が起きたのか彼女にはよく分からなかった。

「薔薇は美しく散る」は琴音も聴いたことがあった。彼女の母は大のベルサ

イユの薔薇フリークであったため、小さい頃からよく母の横でDVDを観ることがあった。

ふと懐かしい気持ちでステージを観ていた、その時である。

演奏は1番が終わり、間奏に入ったところである。

それまでセンターで歌っていた男が一人、おもむろにマイクをステージの上に置いたのである。

一体どうしたのだろう。琴音は不審に思い、由香とともに顔を見合わせた。

すると男は、マイクを持たずに急に大声を出し始めたのである。

「アンドレッ!」

アンドレ?

「一生涯かけて、私ひとりか?」

「え、何?まさかこれって・・・?」由香が眉をひそめてつぶやいた。

 

間違いない。琴音は確信した。

「あの人、オスカルだわ。オスカルになっているのよ!」

そう。彼は歌うことを放棄し、あろうことかオスカルを演じ始めたのである。

驚くべきはその声量だ。彼は今マイクを持っていない。にもかかわらず、

他のメンバーにも劣らない音量を出し続けている。

一体どうすればそこまでの音を出すことができるのか。

しかし、その驚きは次に訪れた衝撃には勝てなかった。

その男が急に、琴音の方を向いたのである。

そして、ステージのへりまでやってきた時、その事件は起こった。

何と、ステージから男が降りてきたのである。

やがて琴音達の前にやってきた男は、琴音を見つめながらこう叫んだのだ。

「アンドレ!私だけを一生涯、愛しぬくと誓うか!?」

琴音の体を何かが走り抜けた。こんな衝撃は今まで受けたことがない。

琴音はもはや呼吸をすることすら忘れていた。

男は続ける。次は観客に向かって高らかにこう告げた。

「近衛隊の諸君!その銃弾で私の体を貫く勇気はあるか!?」

そこからのことを琴音はよく覚えていない。

ただ無我夢中で彼の一挙手一投足に目が釘付けになっていた。

やがて、彼はステージに戻った。そして次の瞬間。

 

彼は凶弾に倒れた。

 

「・・・フランス、万歳。」そう最後に言い残し、彼はステージ上で散っていったのである。

「オスカルッ!!」琴音は思わず心の中で叫んだ。

そして、自分の頬に伝う熱い涙に気づいたのである。

その会場は、万雷の拍手で埋め尽くされた。

凶弾に倒れた男はすっくと立ちあがり、笑顔で愛想を振りまいている。

その後、必死にアカペラ界を生き残るべく、静かに戦いっていきたいという想いを込めて、

男たちは北斗の拳2部作「silent surviver」と「tough boy」でステージを締めた。

〔終章〕

 

電車の窓を黄昏時の街の風景が左から右へ滑っていく。

日々はこうして自分の知らない間に流れて行ってしまうものなのか。

琴音は考えた。こうして自分の身を周りに委ねて時間をやり過ごすのではなく、

たまには途中下車をしてゆっくりと自分の足で歩いてもいいのではないか。

 

「ねぇ、ちょっと寄り道していく?」

隣にいた由香は驚いて琴音の顔を覗き込んだ。そして、

「いいよ。私もそんな気分。」と少し照れたように笑ってくれた。

「それにしても、最後のsilent surviverとかやばかったよね。

全然サイレントじゃなかったし、何よりあのエコー!なにあれ。3人で揃い過ぎじゃない!?

あれってめちゃくちゃ練習してるんじゃないの?」

「ううん。きっと違う。」

琴音はふとそんな気がして自分の考えを述べた。

「多分あの人たちって、そういう感じじゃないと思う。練習もしてるんだろうけど、

なんていうか、全員が同じ方向を向いて同じ呼吸感を持っていて。

何て言ったら良いのか分からないけど、何か練習とかそういうのではないっていうか。

ああ、何言ってるんだろ。」

 

考えがまとめきれない自分にいらついていると、

由香がにやにやとこちらのことを見ていた。

「へぇ、琴音もそんなことを言うようになったんだね。」

「何よそれ。私だってアカペラバンドのメンバーなんだから。」

少しの間見つめあった後、二人は同時に吹き出した。

「ねぇ、由香。」

「何?」

「私、リードボーカルを目指してみようかな。」

その話は現在所属しているバンドでも前々から出ていた。

しかし、琴音は自信と経験のなさからそれを頑なに拒んでいた。

普段ベースパートを歌っている由香は、へぇっと感心して言った。

「琴音もそんなことを言うようになったんですね。」

「私だって言いますよ。アカペラやってるんですから。」

私には何ができるかまだ分からない。だけど、方法は一つだけではない。

彼らのように自由にやりたいようにステージを作ることだってできるのだ。

自分にもできること。自分にしかできないこと。それを1つひとつ確かめるために、

ゆっくり歩いたって構わない。

琴音は、少しだけ背筋を伸ばした。

電車のドアが開く。外から吹き込む風は5月の爽やかさをまだ残している。

その風は、一歩足を踏み出した琴音の髪を静かに揺らしていた。

(終)

そして、彼はステージを降りる~よりアイ2016・その2~

琴音は不思議だった。

昔の自分なら、こんな胡散臭い連中のやっていることなど気にも留めなかっただろう。

彼女は、今時の若者には珍しく、どちらかと言えば地味なものを好んだ。

今日の服装も白いカットソーにジーンズという出で立ちだ。

由香にはいつも「もっとお洒落しなよ。」と言われる。

そういう由香はお洒落に敏感で、今日もブルーのワンピースを爽やかに着こなしている。

音楽も地味なものを好んで聞いた。

ロックやパンクといった激しい楽曲よりも、スピッツの方が好きだった。

だからかもしれない。彼女にとってアカペラという音楽は楽しいものだった。

自分の気持ちを素直に声に出せる。

そういう意味でアカペラは彼女の肌に合っていたのだ。

そんな琴音の目の前に、全く異質なアカペラが現存している。

共鳴する奇声、妙に大きな音圧。今まで触れたアカペラとは全く異なっていた。

しかし、だからこそ不思議だった。何だろう。この妙に気になる感覚は。

 

その黒尽くめの男たちは、自分たちの近況を喋り始めた。

「皆さん、大ニュースです。そうそう、某東京都知事が大変なことになっていてね。

違います。

ではなくて、そうそう。某岸和田出身の有名人が覚せい剤の所持で捕まってね。

はい、これも違います。

ぷっちだるとは一切関係がございません。

実はですね。この間ついにテレビに出演してしまいました!

公費で湯河原まで行って?

ちがうっちゅうねん!

もちろん覚せい剤も所持していません!!

実は先日、毎日放送MBSと、ABCテレビに出演してきました!

とは言っても、それぞれの局が主催するイベントに参加しただけなんですけどね。

電波に乗ったわけではなく、ステージに乗っただけですね。

上手くないですね。

そんなわけで我々ぷっちだるも新しい活躍の場をどんどん広げております。

生き残るのは強い者ではありません。大きい者でもないのです。

変化に対応できた者のみが生き残ることができるのです。

他でもない。ダーウィンの進化論のお話です。

そこで今回は、変化に対応すべく新しい曲をご用意いたしました。

今まで誰もなしえなかったこと。考えていても実行できなかったこと。

今宵、皆さまは全く新しいものをご覧になるでしょう!

お届けいたしますのは、・・・アニソンです。

 

変化してないやんけ!!

 

とのご批判もあろうかと思いますが、中身がこれまでと違います。

曲の途中、予期せぬことが起きますので、心の準備をお願いいたします。

お贈りするのは『ベルサイユの薔薇』の主題歌でございます。

ついに少女漫画の世界に足を突っ込んでまいります。

それではお聴きください。『薔薇は美しく散る』!!」

そして琴音は、予想もしなかった事態に巻き込まれるのであった。

(続く)

そして、彼はステージを降りる~よりアイ2016~

〔序〕

それは突然の出来事であった。

彼女は一瞬、何が起こったのか分からなかった。

つい先ほどまで舞台に立っていた人間が自分の前に立っている。

その思いがけない光景に、彼女は思わず吹き出してしまった。

あぁ、人間は予想外のことが起こると笑ってしまうのだな。

彼女はふとそんなことを考えた。

 

彼女の目の前に立った男は必死に何かを訴えかけようとしている。

しかし、彼女には彼が何を言っているのかよく分からなかった。

そう言えば何かの本で読んだことがある。

人は思いがけない事物を目の当たりにした時、思考がストップしてしまうのだという。

次の瞬間。男はゆっくりと倒れ落ちていく。まるでコマ送りの映像を見ているかのように、

彼女はその様子を茫然と眺めていた。

それが、あの日彼女が見た風景のすべてであった。

 

〔その1〕

―それはよく晴れた5月のとある1日であった。

その日、阪急北千里駅前にあるDios北千里では、毎年恒例のアカペライベントが行われていた。

そのイベントには数多くのアカペラバンドが参加していた。

中には遠く名古屋や岡山から参加しているバンドもあった。

朝から始まったイベントもいよいよ終盤に差し掛かった頃である。

舞台には黒尽くめの衣装を着た6人の男たちが立っている。

そのバンドはぷっちだるという名前であった。

そのバンドはこれまでイベントには何度も出演している常連らしい。

真山琴音は大学からアカペラを始めた。

きっかけは大学の入学手続きの際に知り合った桐島由香の誘いだった。

由香は中学時代から合唱部に所属していたが、

大学に入学したのと同時に合唱からは卒業し、アカペラサークルに入団すると琴音を強引に誘い込んだのだ。

北千里で開催されたイベントに来たのも由香からの誘いがあったからだ。

「面白いものが見れるかもよ。」

確か由香もそのイベントを観に行くのは初めてだったはずだ。

大体アカペラのステージで本当に面白いものが見れるものか。

半信半疑には思いつつ、偶然バイトが休みだったこともあり、

朝から由香と二人でイベントに観客として参加していたのだ。

 

ふと由香に声をかけられた大学のキャンパスのことを思い出していると、

黒尽くめの6人の演奏が始まった。

あ。この曲は聴いたことがある。確か巨人が出てくるアニメの主題歌だ。

バンドによってやっぱり演奏する曲も違うのだな。

琴音は自分たちとは違うそのバンドの演奏に新鮮さを感じていた。

 

やがて演奏が終了した。どうやらここからMC、つまり曲と曲の間をつなげる「しゃべり」が始まるらしい。

 

「はい、どうも~。ぷっち、ぷっち、ぷっちだるで~す!」

 

胡散臭い。友人との会話でそんな言葉を使ったことはない。

しかし不思議なことに、琴音の頭にはなぜかそんな言葉しか浮かんでこなかった。

(続く)